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以下の話は、主にロバート・チャルディーニの『影響力の武器——説得の心理学』に基づく。1私はこの本を3冊持っている。自分用に1冊、友人に貸すために2冊だ。
社会心理学でいう希少性とは、物が手に入りにくく見えるほど、欲しくなることである。
- 2歳の男の子を、おもちゃが二つある部屋に入れる。一つは遮るもののない場所に置き、もう一つはアクリル板の壁の向こうに置く。すると、その子は簡単に手に取れるおもちゃを無視し、手を出してはいけないように見えるほうを取ろうとする。壁が簡単に乗り越えられるほど低ければ、どちらのおもちゃを取ろうとする確率にも違いはない。2
- デイド郡がリン酸塩入り洗剤の使用と所持を禁じると、多くの住民は近隣の郡まで車で行き、リン酸塩入りの洗濯洗剤を大量に買い込んだ。規制の影響を受けていないタンパの住民と比べ、デイドの住民は、リン酸塩入り洗剤はより優しく、より効果的で、しみを落とす力が強く、そのうえ注ぎやすいとまで考えた。3
同じように、禁じられていたり秘密だったりするように見える情報は、より重要で信頼できるように思える。
- ノースカロライナ大学の学生は、男女共用の学生寮に反対する演説が禁止されたと知ると、演説を聞いてもいないのに、男女共用寮への反対を強めた。4
- 運転手が賠償責任保険に入っていると言うと、実験の陪審員は、無保険だと言った場合より平均4000ドル多い賠償を被害者に認めた。その後で裁判官が、保険に関する情報は証拠として認められず、無視しなければならないと伝えると、陪審員が認めた賠償額は、運転手が無保険の場合より平均1万3000ドル多くなった。5
- 仕入れ先から牛肉が品薄だと聞かされたスーパーの仕入れ担当者は、十分にあると聞かされた担当者の2倍の量を発注した。牛肉が品薄なうえ、その品薄についての情報自体も希少で、品不足はまだ一般には知られていないと聞かされた担当者は、6倍の量を発注した。(この研究は現実の取引の中で行われたので、伝えた情報は実際に正しかった。)6
これを説明する定番の理論は「心理的リアクタンス」だ。「人は、してはいけないと言われると、ますますやろうとする」を社会心理学の言葉で表したものである。根底にある本能は、地位の維持と選択肢の維持らしい。人間の働きかけによって自由を制限されそうになると、私たちは支配に抵抗する。そして、たとえ自然の成り行きであっても、選択肢が消えそうに見えると、なくなる前に飛びつこうとする。
消えそうな選択肢に飛びつくのは、狩猟採集社会ではよい適応かもしれない。熟しているうちに果実を採るのだ。だが貨幣社会では、かなり高くつくことがある。チャルディーニが観察したある家電店では、客が商品に興味を示すと、販売員が近づき、つい20分前に最後の1台が売れてしまい、在庫がないのだと残念そうに告げたという。希少性によって急に欲しくなった客は、奥の部屋か倉庫か、どこかに売れ残りがないか探せないかと、しばしば尋ねた。「そうですね」と販売員は言う。「あるかもしれませんし、調べることはできます。ただ、お探しなのはこの機種で、この値段で見つかったらお買い上げになる、と考えてよろしいですか?」
チャルディーニが述べるように、この不具合の主な兆候は、物を使うことよりも、所有することを夢見るようになることだ。(ティモシー・フェリスも、人生設計について似た助言をしている。どんな持ち物や地位の変化が幸せにしてくれるかではなく、どんな継続的な経験が幸せにしてくれるかを問うのだ。)
だが、手に入らないものを欲しがることの、真に根本的な問題は、実際に手に入れた途端、それが手に入らないものではなくなることだ。ただ手に入るものに喜びを見いだせなければ、私たちの人生はいつまでも満たされない……。
Robert B. Cialdini, Influence: The Psychology of Persuasion: Revised Edition (New York: Quill, 1993). ↩︎
Sharon S. Brehm and Marsha Weintraub, “Physical Barriers and Psychological Reactance: Two-year-olds’ Responses to Threats to Freedom,” Journal of Personality and Social Psychology 35 (1977): 830–836. ↩︎
Michael B. Mazis, Robert B. Settle, and Dennis C. Leslie, “Elimination of Phosphate Detergents and Psychological Reactance,” Journal of Marketing Research 10 (1973): 2; Michael B. Mazis, “Antipollution Measures and Psychological Reactance Theory: A Field Experiment,” Journal of Personality and Social Psychology 31 (1975): 654–666. ↩︎
Richard D. Ashmore, Vasantha Ramchandra, and Russell A. Jones, “Censorship as an Attitude Change Induction,” Paper presented at Eastern Psychological Association meeting (1971). ↩︎
Dale Broeder, “The University of Chicago Jury Project,” Nebraska Law Review 38 (1959): 760–774. ↩︎
A. Knishinsky, “The Effects of Scarcity of Material and Exclusivity of Information on Industrial Buyer Perceived Risk in Provoking a Purchase Decision” (Doctoral dissertation, Arizona State University, 1982). ↩︎