非公式日本語訳 — 原著者・発行元による公式の翻訳ではありません

Eliezer Yudkowsky — 非公式日本語訳

評価のしやすさと、安く済ませる贈り物選び

Evaluability (and Cheap Holiday Shopping)

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ハロウィーン・感謝祭・クリスマスと続く季節の、お金のかかる時期が近づいてきた。読者の頭には、きっとある大きな疑問が浮かんでいることだろう。

「Overcoming Biasさん、実際には大金を使わず、気前がいいと見られるために利用できるバイアスはありませんか?」

うれしいことに、答えは「あります」だ! シーの論文「少ないほうがよい――価値の低い選択肢が、価値の高い選択肢より高く評価されるとき」によると、55ドルのコートを贈るより、45ドルのマフラーを贈るほうが、気前がいいと思われやすい。1

これは、もっと一般的な現象の一例だ。以前の実験で、シーは被験者に、中古の音楽辞典にいくらまで払ってよいかを尋ねた。2

仕掛けは、一部の被験者には二冊を並べて見せ、ほかの被験者には一冊だけを見せたことにあった……。

選択肢を一つだけ見た被験者が支払ってもよいとした額は、辞典Aが平均24ドル、辞典Bが平均20ドルだった。選択肢を両方並べて見た被験者は、辞典Bに27ドル、辞典Aに19ドルまで払ってよいとした。

もちろん、少なくとも何かに使うつもりがあるなら、辞典の項目数は表紙が破れているかどうかより重要だ。しかし、辞典を一冊だけ見せられ、20,000項目あると言われても、その20,000という数字は大した意味を持たない。少ないのか? 多いのか? 誰にわかるというのだろう? それは評価できないのだ。一方、破れた表紙は目立つ。そこにははっきりした感情的な価値づけがある。つまり、悪い。

だが、二冊を並べて見ると、項目数は評価できないものから評価できるものに変わる。比較できる同種の量が二つあるからだ。そして、ひとたび項目数を評価できるようになると、その側面は破れた表紙の重要性を圧倒する。

スロヴィックらの研究から。あなたはどちらを選ぶだろう?3

  1. 29/36の確率で2ドルを得る。
  2. 7/36の確率で9ドルを得る。

この二つにつけられた平均の価格(等価とみなされた金額)は、それぞれ1.25ドルと2.11ドルだったのに、魅力度の平均評定値は13.2と7.5だった。価格と魅力度のどちらを尋ねる場合も、被験者には、評価した賭けから二つを無作為に選び、価格または魅力度を高くつけたほうの賭けを実際にしてもらうと伝えてあった。(実際にやりたい賭けほど、魅力度や価格を高く評価する動機があったわけだ。)

より多くの金銭的価値がある賭けのほうが、魅力に乏しく見えた。典型的な選好の逆転だ。研究者たちは、ドルで表した金額は値段をつける課題によりなじみ、一方で、当たる確率は魅力度になじみやすいのだと仮説を立てた。そこで研究者たちは考えた。賭けの見返りを、感情的にもっと際立つもの、感情のうえで評価しやすいもの、つまり、もっと魅力的なものにしてみてはどうか?

どうやったのか? 賭けに、ごく小さな損失を追加したのだ。もとの賭けは、7/36の確率で9ドルを得るというものだった。新しい賭けは、7/36の確率で9ドルを得て、29/36の確率で5セントを失う。もとの賭けでは、暗黙に9ドルの魅力を評価する。新しい賭けでは、9ドルを得ることを、5セントを失うことと比べて評価させられる。

「結果は期待を上回った」とスロヴィックらは述べている。新たな実験では、7/36の確率で9ドルを得る単純な賭けの魅力度は平均9.4だったのに対し、29/36の確率で5セントを失う可能性を含む複雑な賭けは、平均14.9だった。

追試では、確実に2ドルを得ることより、もとの賭けを好むかどうかを調べた。もとの賭けを選んだ学生は33%にすぎなかった。別の集団に、確実な2ドルと、5セントを失う可能性を加えた新しい賭けとの二択を示すと、実に60.8%が賭けを好んだ。結局、9ドルという金額にはそれほど魅力がないが、9ドル対5セントという勝ち負けの比率は、驚くほど魅力的なのだ。

純粋な損失を追加することで、賭けをもっと魅力的にできる! 心理学は面白いだろう? だから、人間の知能の驚くべき込み入り方を本当に理解する人は、人間のようなAIを設計したいとは思わないのだ。

もちろん、これは被験者が二つの賭けを並べて見ない場合にしか通用しない。

同様に、シーの1998年の研究で、被験者は次の二つのアイスクリームのどちらを好んだと思うだろうか?

  図:大きさの異なる二つのアイスクリームのカップ  

シーの論文より。© 1998 John Wiley & Sons, Ltd.

当然ながら、答えは、一つのアイスクリームだけを見たか、二つを並べて見たかによって変わる。一つだけ見た被験者は、店Hには1.66ドル、店Lには2.26ドルまで払ってよいとした。両方を見た被験者は、店Hには1.85ドル、店Lには1.56ドルまで払ってよいとした。

ここから、贈り物選びについて何がわかるだろう? 16GBのiPod Touchに400ドルを使えば、受け取る人が見るのは最も高価なMP3プレーヤーだ。Nintendo Wiiに400ドルを使えば、受け取る人が見るのは最も安いゲーム機だ。どちらが払った金額に見合う価値があるだろう? ああ、だが、その問いが意味を持つのは、二つを並べて見た場合だけだ。買い物をするあなたは両者を並べて考えるが、受け取る人は、自分がもらったものしか見ない。

使える金額が決まっていて、目的が、相手を実際に助けることではなく友情を示すことなら、あえて費用対効果を考えずに選んだほうがいい。相手を感心させるためにいくら使うかを決め、その金額で買える最もくだらない物を探そう。使う金額が一定なら、品物の種類が安価であるほど、個々の品物は高く見える。25ドルのシャツと25ドルのろうそくなら、どちらが印象に残るだろう?

そう考えると、日本で50ドルのメロンを買う習慣にも、まったく新しい意味が出てくるだろう? あなたはそれを見て首を振り、「日本人はいったいどうなっているんだ?」と言う。だが、彼らはわずか50ドルを使うだけで、信じられないほど気前がよく、浪費家とさえ思われる。豪華な夕食に200ドルを使っても、50ドルのメロンを贈るほど裕福には見えないかもしれない。25ドルのつまようじや10ドルのほこりを贈る習慣さえあれば、もっと少ない出費で済ませられるのに。

追伸:実際にこの手を使ったなら、何を買ったか教えてほしい。

Christopher K. Hsee, “Less Is Better: When Low-Value Options Are Valued More Highly than High-Value Options,” Behavioral Decision Making 11 (2 1998): 107–121. ↩

Christopher K. Hsee, “The Evaluability Hypothesis: An Explanation for Preference Reversals between Joint and Separate Evaluations of Alternatives,” Organizational Behavior and Human Decision Processes 67 (3 1996): 247–257, doi:10.1006/obhd.1996.0077. ↩

Slovic et al., “Rational Actors or Rational Fools.” ↩