非公式日本語訳 — Machine Intelligence Research Institute (intelligence.org) の原文をAGI Hubが翻訳したものです。MIRIによる公式の翻訳ではありません。

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情報技術における指数関数的な傾向とそうでない傾向

原題: Exponential and non-exponential trends in information technology / Analysis

原文著者: Luke Muehlhauser and Lila Rieber / 掲載元: Machine Intelligence Research Institute (intelligence.org) / 原文公開日: 2014-05-12

訳文状態: 校閲済み(原文対照レビュー実施)

ライラ・リーバーとの共著。

レイ・カーツワイルは『The Singularity Is Near』で、「情報と情報技術のあらゆる側面が、指数関数的な速さで成長している」と書いています。((85ページ。同じ本では、「価格性能比、容量、普及率を含む、情報技術のあらゆる側面で、指数関数的な成長が続いている」とも述べています(377ページ)。『How to Create a Mind』では、「調査の過程で、驚くべき発見をした。ある技術が情報技術であれば、価格性能比と容量の基本的な尺度は……驚くほど正確な指数関数の軌跡をたどる」と書いています(254ページ)。))『Abundance』の著者たちは、ナノ材料、ロボット工学、医療など八つの分野を、「指数関数的に成長する分野」として挙げています。((57ページ。全体として、ディアマンディスとコトラーは、すべての情報技術が指数関数的な成長曲線をたどるというカーツワイルの考えに、同意しているようです。たとえば99ページでは、「[ある種の農業生態学的な]実践そのものは、明らかにローテクに見えるものの、それらが知識を得ている分野はすべて情報に基づく科学なので、指数関数的な成長曲線上にある」と書き、190ページでは、「医療のほぼすべての要素は、今や情報技術であり、したがって指数関数的な軌跡上にある」と述べています。))『The Second Machine Age』も、一般に「技術の進歩」は「指数関数的に向上している」と述べています。((10ページ。著者たちは、デジタルな過程になるものなら、何でも指数関数的な傾向をたどると考えているようです。「……電池は……基本的には化学的な装置であってデジタルな装置ではないため、性能が指数関数的な速さで向上してこなかった……」(52ページ)。))

これらの著者が、技術発展における指数関数的な傾向は、驚くほど一般的だと強調するのは正しいことです(Nagyほか 2013)。また、その傾向は、荒唐無稽に聞こえる未来を無視するという、私たちにもともと備わった判断の癖を疑う理由にもなります。1980年代の人にとってiPhoneは荒唐無稽ですが、私たちにとっては手ごろな消費財です。

残念ながら、こうした「指数関数的な技術」の一般向けの説明は、非常に簡潔なため曖昧でもあることが多く、一般の人にも専門家にも誤解を生んでいます。((たとえばカーツワイルは、「指数関数的」という言葉を、かなり緩い意味で使っているようです。Kurzweil(2001)では、ISPの価格性能比のこのグラフを、指数関数的傾向の例として挙げています。これが議論で混乱を生む場合もあるようです。たとえば、コンピューティングの指数関数的傾向という主張に対するイルッカ・トゥオミの批判(2002、2003)に答え、カーツワイルは、トゥオミが正しいなら、「私が1967年にMITで使った、数百万ドルする0.25 MIPSのコンピューターも、最近2,000ドルで買った1,000 MIPSのコンピューターも、実は存在しなかったと結論せざるをえない……情報技術の世界が平坦、すなわち線形であると証明しようとする彼の粘り強さには感心する」と書きました。しかし、トゥオミの見方から、そのような結論は導かれませんし、彼は情報技術の傾向が線形だったとも言っていません。対立は、トゥオミが「指数関数的」を厳密な意味で使い、カーツワイルが非常に緩い意味で使っていたことから生じたように見えます。トゥオミのカーツワイルへの再回答を読むと、この点がさらに明確になります。))私(ルーク)は、上記の本を読み、すべての情報技術が常におおむね指数関数的な傾向をたどるという印象を持った人に、よく出会います。しかし「おおむね指数関数的」の範囲を非常に広く取らないかぎり、それは正しくありません。

そこで、カーツワイルたちが何を主張するつもりなのかをあまり推測せず、情報技術に見られる指数関数的な傾向と、そうでもない傾向の例をいくつか示して、よくある誤解を解いてみたいと思います。もっと網羅的な調査は、他の研究者に任せなければなりません。((この記事の調査を手伝ってくれたジョナ・シニックに感謝します。))

1ドル当たりの計算量:今も指数関数的

カーツワイル自身が「情報と情報技術のあらゆる側面が、指数関数的な速さで成長している」を文字どおりの意味で言っていないことは、明らかです。彼自身、情報技術のある側面で、指数関数的でない成長の例を以前に論じているからです。たとえば、Fuller & Millett(2011a)が示すように、プロセッサーのクロック周波数の指数関数的な傾向が2004年に途切れたことを、彼はよく知っています。((ただし、『The Singularity Is Near』(2005年)61ページのクロック周波数の指数関数的な予測線は、今では誤りだったとわかっています。カーツワイルのグラフは、2002年のITRS報告書に基づいて2001〜2016年の傾向を予測していましたが、実際のクロック周波数の伸びは、その予測を大幅に下回りました。))

FullerとMillettの図1

これは片対数グラフなので、直線が指数関数的な傾向を表します。クロック周波数は2004年に指数関数的な向上をやめましたが、チップ当たりのトランジスタ数は、シングルコアからマルチコアのプロセッサーへの移行によって、指数関数的に増え続けていることに注目してください。

他の箇所でカーツワイルは、特に価格性能比、たとえば1ドル当たりの計算量の指数関数的な傾向を強調しがちです。これはまったく妥当です。ほとんどの人は、プロセッサー構造の細部には関心がなく、1ドルでどれだけのことができるかを気にしているだけだからです。((Fuller & Millett(2011b)は、「計算性能の規模を拡大すると言うとき、暗黙に、支払う1ドルごとに買える計算性能を増やすことを意味している」と書いています(81ページ)。))そして、これまでのところ、1ドル当たりの計算量の指数関数的な傾向は続いています。((Kurzweil(2012)の第10章、注10には、1900〜2010年にわたって「1,000ドル当たりの毎秒計算回数」が指数関数的に増えている図があり、2004年より後のデータも複数含まれます。しかし、そのデータの出典が見つからず、インフレ調整の有無もわかりませんでした。そこで私たちは、Koh & Magee(2006)のデータセットに、NotebookCheck、PCStats、Tom’s Hardware、CPU-Worldから集めたデータを追加したものを使いました。生データはこちらで、インフレ調整後の1ドル当たりMIPSが、引き続き指数関数的な傾向をたどっていることを示しています。))

しかし、この傾向があとどれほど続くかは、はっきりしません。特にダークシリコン問題によって、現在は指数関数的である1ドル当たり計算量の伸びが、鈍るかもしれません。ジョエル・フルスカは、この傾向が最近直面している他の課題をこちらで取り上げています。その中には、18か月前にIntel、TSMC、Samsungがそろって資金を賭けた、450 mmウェハーの生産停止も含まれます。

1ドル当たりのDRAM容量:伸びは鈍化

もう一つ重要な価格性能比の傾向は、1ドル当たりのDRAM容量です。長年、ほぼ正確に指数関数的でしたが、最近はその伸びが鈍っています。((このグラフは、Bryant & O’Hallaron(2011)584ページと、Performance Curve Databaseのデータを使っています。生データはこちらです。))

DRAMのグラフ

DRAMの同じ減速傾向は、Hennessy & Patterson(2011)の17ページでも報告されています。100ページには、次のようにあります。

DRAMは20年間、ムーアの法則に従い、3年ごとに容量が4倍の新しいチップを生み出してきた。1ビットのDRAMを製造するうえでの課題から、1998年以降、新しいチップの容量は2年ごとに2倍になるにとどまっている。2006年にはさらにペースが落ち、2006〜2010年の4年間では、容量は[1回]2倍になっただけだった。

1ドル当たりのSRAM容量:伸びは鈍化

SRAMのような、別の種類のコンピューターメモリーはどうでしょうか。SRAMの価格は1980〜1990年に急落しましたが、その後の下がり方は、より緩やかになっています。((データはBryant & O’Hallaron(2011)584ページから。生データはこちらです。))

SRAMのグラフ

1ドル当たりのハードドライブ容量:タイの洪水で中断

ハードドライブの記憶容量1ギガバイト当たりの価格は、約30年間、指数関数的に下がっていました。ところが、2011年10月のタイの洪水で、いくつかのハードドライブ工場が被害を受けると、価格は一時、突然上昇しました。それ以降は、比較的横ばいです。((私たちのデータは、マシュー・コモロフスキーの記憶容量の価格についてのページから得たものをインフレ調整したもの、Koh & Magee(2006)、Bryant & O’Hallaron(2011)、Performance Curve Databaseに基づいています。))

ハードドライブの記憶容量当たり価格

洪水は多くのコンピューティングサービス事業者に打撃を与えました。指数関数的な傾向を前提に見込んでいた安い価格でサービスを提供することに苦労し、ときには実現できなかったのです。BackBlaze、Intel、Joyentのコメントなどをご覧ください。

プロセッサーのクロック周波数の指数関数的な傾向が、物理的な制約によって止まったのに対し、記憶容量1ギガバイト当たりの価格の指数関数的な傾向は、少なくとも今のところ、自然災害によって鈍ったのです。